血まみれのそれが、何を意味していたか…

「きゃー!!」

マリンが叫び声を上げ、ティファに抱きついた。

「もう、クラウド!」

ティファに怒られ、彼は頭をかく。

「いや、だってこの場合は仕方ないだろ?」

「でも…」

ティファが軽くにらむのを手で制しながら、彼は辺りを見回す。

「な、ケット・シー」

絶妙な突っ込みとフォローを得意とする傍らのぬいぐるみに、 彼は助けを求め話しかけるが、返事は無かった。

「ケット?」

「あ、すいません」

猫はもぞもぞと動き、座りなおした。

「次は誰だ?」

クラウドが尋ねる。



ここはセブンスヘブン。

空調の故障によって本日は臨時休業。

エッジは記録的な猛暑を迎え、修理屋は忙しく、

ここの修理は翌日になるという無情の知らせを昼間受けた。

暑さを紛らわすため、若い二人・ティファ、クラウドは、子供たち― マリン、デンゼルにせがまれ、怖い話をする羽目になった。

ここに最近世話になっているシェルク、彼女の様子を見に訪れたケット・シー、

偶々居合わせたヴィンセントを巻き込み、納涼怪談話は始まった。


「じゃ、次はボクですね」

ケット・シーが立ち上がり、ぴょこんとおじぎする。

「知り合いのおっさんの体験談です」

その言葉に、子供二人を除く四人の頭には同じ人物― はっきり言えば、この猫の本体である男性の姿が浮かんだ。

「月の無い晩でした」

その男は一人で車の運転をして、ある場所を目指していました。

舗装されていない道路はでこぼこしていて、あまりスピードが出せません。

ヘッドライトは数十メートル先の地面を照らしていますが、

左右にはそれほど明かりが届かないため、曲がる時は慎重にならざるを得ず、

自然と車の速度は落ちていました。

道に迷わないように道沿いに車を走らせ

何度目かのカーブで

車の屋根に、「ぼこん」と何かが落ちた音がしました。

男は車を止め、ヘッドライトをつけたまま懐中電灯を手に降ります。

その明かりで照らすものの、屋根の上には何もなく―

何かが当たったような形跡すら残っておらず、辺りにも変わったものは 落ちていません。

石か何かが当たったのだろう、そう判断すると 男は再び車に乗り込み、ゆっくりと車を発進させました。

次第に速度は増し、地面は流れるように見えます。

同じような風景が続き―

ぼこん、ぼこん

二回、屋根に何かが当たる音

速度を落とせば

ぼこん、ぼこん、ぼこん

三回、屋根に当たる音

もっと速度を落とせば

ぼこん、ぼこん、ぼこん、ぼこん。

四回。

ここに至って男は車を止めました。

車の中から辺りを見渡してみても、ヘッドライトの中に浮かび上がるのは、

でこぼこの地面。

彼はもう一度懐中電灯を手に降りました。

でもやっぱり何もありません。

何度かそんなことがあり、止まってもやはり何もなかったので、彼はかまわず車を走らせました。

ぼこんぼこんぼこんぼこんぼこんぼこんぼこんぼこん

音は数を増やし、彼はいらだってスピードを上げます。

ふと気がついたときには道を大分それていました。

いやな予感に急ブレーキをかけ、その場で車をスピンさせ止めると、 目の前には深い崖が口を開いていました。

車から降り、崖の下を見下ろしても深淵が顔を覗かせるのみ。

ふと後ろを振り向くと―

ばたん!

「ユフィちゃんだよ!」

セブンスヘブンの扉が唐突に開いた。

「どうして今日は休み…およ?何で皆そんなしけた顔してんの」

クラウドとティファはデンゼルとマリンを囲うように抱き合い。

シェルクはヴィンセントのマントの裾をつかみ。

ケット・シーは座っていた椅子から転がり落ちて床に寝ていた。

全員の視線に怪訝な表情を浮かべ、ユフィが首を傾げる。

ケット・シーが起き上がる。

「あ、すいません」

「次はボクの番でしたな…それじゃ知り合いのおっさんの体験談を…」

「え?」






















暑くてむしゃくしゃして書いた。

別に怖くないと思った。


オチ。

「局長、何でニヤニヤしてるんだ?」

「いいえ、なんでもありませんよ」